ヨハネスブルク・サミット参加報告(2002年2月2日~2月3日)

1992年のブラジル・リオサミット(UNCED)から10年経ち、21世紀の新たな地球環境問題を包括的に議論する場が、南アフリカのヨハネスブルクで、8月26日から9月4日まで開催(首脳級の会議は9月2日から4日までの3日間)されました。
私は9月1日の防災の日に行われた東海関東直下型地震の政府調査団団長として、静岡県御前崎町で行われた総合訓練を視察する公務があったため、同日に行われたGLOBE(地球環境国際議員連盟)の総会(9月1日開催)に参加できず、9月2日の早朝7時にヨハネスブルク着となりました。
 
ヨハネスブルクでは、現在、市の中心地となっている首脳級が集まって議論するサントン地区の国際会議場、そこから徒歩で5分の所にある日本政府仮設事務所(エキスポート・ハウス内)、そこから車で30分ほど西に離れた政府機関およびNGOが主催するウブントゥ村での展示場、さらに15分ほど西に離れたウォーター・ドームと呼ばれる会場では水問題に関心のある政府機関・NGOが展示・会議・イベントを行う場として使われ、さらにサントン地区から南に車で1時間ほど離れたNGO中心のナズレック会場、そして宿泊施設不足のため、日本政府団約2百人が宿泊するサントン地区から東に1時間ほど離れているホテルと、6つの会場移動に時間を要した会議となりました。

【1】行事報告
●9月2日(月)
1.GLOBE主催土地利用・分水嶺・海洋エコシステム国際立法者フォーラム

2.GLOBEアフリカ南部会長との会談
3.首脳級会合小泉総理演説
4.小泉総理表敬訪問
5.ウブントゥ村視察

【2】行事報告
●9月3日(火)
1.ボリビア持続開発・企画大臣との会談
2.第3回世界水フォーラム・プログラム発表式

3.世界銀行総裁会談
4.SOWETO視察
【3】ヨハネスブルク・サミット総括

1.第2回目サミットの感動のない会議
2.サミット成果が問題の進行速度を超えられない現実

3.ノウハウは着実に蓄積
4.次回サミットへの日本の課題

 
【1】行事報告
 
●9月2日(月)
1.GLOBE主催土地利用・分水嶺・海洋エコシステム国際立法者フォーラ
 ヨハネスブルクに到着後直ちに、私はGLOBEジャパンを代表して、午前10時からウォータードームで開催されたGLOBE主催の国際立法者フォーラムに出席しました。そこでは、来年3月、日本の京都・滋賀・大阪で開催される第3回世界水フォーラムに向けて、今までGLOBEジャパンが取り組んできた事業の紹介、前回オランダのハーグでの第2回フォーラムで打ち出された、食糧に必要な水管理、水管理方式の代替、生態系の機能評価を示した「世界水ビジョン」や「ハーグ閣僚宣言」を踏まえ、これらを具体的な行動に結びつけるため、現在GLOBEジャパンが「水行動報告書」の策定を目指しており、かつ、第3回世界水フォーラムでGLOBEが主催する「水と立法者」セッションでの立法者の役割と市民参加型の取り組みに関する考え方について、英語で10分間、約30人の参加者にアピールしました。
2.GLOBEアフリカ南部会長との会談
 同日午後1時から、エキスポート・ハウス内会議室にて、南アフリカの女性下院議員で、4年前の滋賀での京都議定書COP6会議場で開催したGLOBE総会の場で、私と共同議長を務めたアフリカ南部諸国15カ国で構成するGLOBEアフリカ南部会長ブエン・マランガ氏と、日本側はGLOBEジャパンの加藤修一参院議員、河野太郎衆院議員、小杉隆前衆院議員、そして私の4人が1時間程の意見交換を行いました。
 南アフリカはアパルトヘイト政策廃止後、女性参画社会を目指しており、国会議員も5割の女性議員誕生を半強制的に進めているため、党首および外務大臣等、重要閣僚に大勢の女性が任命されていました。私はここ数年の間に南アフリカが治安悪化になっている原因と解決策について尋ねると、マランガ会長は、近隣諸国の政情不安定により、合法・不合法移民が増え続け、貧困、失業問題等、課題が多いことを述べていました。この事実は、アフリカでの治安・貧困・非衛生等の問題解決は、特定の1カ国だけ対応していては解決できないことを意味しているため、今回、ヨハネスブルクでサミットが開催され、世界中がアフリカに関心を持つ意義は大変重要なことであると認識しました。
3.首脳級会合小泉総理演説
 各国政府として最も重要な行事である首脳級会合が国際会議場で行われ、小泉総理は午後3時半から5分間、「持続可能な開発のための日本政府の具体的行動―地球規模の共有を目指して」と題して演説を行いました。私たちGLOBEメンバーもこの演説会場で、大木環境大臣、川口外務大臣、安倍官房副長官等と小泉演説を聴き、この中で、今後5年間で2,500億円の低所得国向け教育援助に言及し、教育分野重視の日本のODA政策が明確に打ち出され、参加国の日本の首相発言には、きわめて高い関心と反応が見られました。
4.小泉総理表敬訪問
  総理演説後の午後4時15分から15分間、田端衆院議員、加藤参院議員、小杉前衆院議員そして私の4名が小泉総理が宿泊する部屋を訪れ、総理演説に対する感想を述べ、またGLOBE関連行事の報告を行いました。特に、従来から、日本のODAはバラマキ外交批判が強く、かつ、景気低迷下での財源逼迫状況下に教育重視のODA政策をアピールできたのは、今回のサミットでの世界実施文書の一つである、「持続可能な開発のための教育の10年」に先駆けたものであり、公明党およびGLOBEメンバーにとっても大きな成果といえます。
 ヨハネスブルクにいても総理は日本の行革に関心があるせいか、私が総理に1ヶ月前に提案した特殊法人総裁人事を公募方式にする具体案に対して、総理は私に、「大変よい案であり、今検討しています」と謝辞の言葉がありました。
5.ウブントゥ村視
  総理表敬訪問後、私は単独で何百という政府機関・NGOが参加しているウブントゥ村の展示会場を視察しました。最初に「日本パビリオン」を訪問し、環境省、国土交通省、トヨタ自動車等官民約10社の展示物を視察しました。とくに、宇宙開発事業団との共同事業である地球観測プロジェクトは総務省も関係しており、気候変動、海洋水温変化、地殻変動等、日本の環境技術の高さを十分にアピールできる展示内容でした。
 その後、各国の趣向を凝らした展示物がある国際展示会場、また、野外の小さな展示小屋を視察しました。その中でも、SGI(創価学会インターナショナル)の展示場には、池田SGI会長の「持続可能な未来のための教育提言」と、今回同行した広中和歌子参院議員(民主党副代表)と加藤修一参院議員(公明党)が起草委員として、サミット政治宣言に(結果的には議長提言として)紹介された「地球憲章」のパネルが展示されており、翌日、小泉総理がこの展示小屋を訪れたことを聞きました。
 結局、夜8時までウブントゥ村を視察し、この日一日でヨハネスブルクのサミット会場のほとんどを視察し、この日の歩行数は2万歩近くになっていました。
 
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【2】行事報告 
●9月3日(火)
1.ボリビア持続開発・企画大臣との会談
 朝10時から30分間、重債務貧困国(HIPC)のボリビア持続開発・企画大臣と日本のGLOBEメンバー4名が会談し、ボリビアの社会経済政策ならびに日本からの支援要請内容を聴取しました。高山国であるボリビアの首都ラパスは標高3,700mにあり、国土の6%だけが灌漑農地で、これを10数年間以内に12%に拡大し、農業生産性向上のための日本の支援要請がありました。
私は、ヨハネスブルクに遠藤農水副大臣が滞在していることを知っていたため、ボリビア大臣に日本の農水副大臣との会談設定の約束をしました。
 数年前までは、多くの発展途上国が日本のODA増額を依頼するケースが通常でしたが、今回の会談では、日本側の国会議員から、現在の日本の経済状態が厳しく、国民もODA予算には厳しい見方をしているため、従来通りの支援が難しいことをはっきり告げながらの会談となりました。しかし、ボリビアは国民一人当たりのGDPが千ドル以下と、ボリビア国民のことを考えると、何とかできないかとの思いが強くなり、私は今回のサミットでの小泉総理の教育支援事業の紹介等、いくつかの情報提供を行い、会談は終了しました。
2.第3回世界水フォーラム・プログラム発表式
 来年3月に日本で開催される第3回世界水フォーラムのプログラム発表式が、ウォーター・ドームにて午後1時半からの予定で行われましたが、同時通訳の器具が作動せず、同時通訳から逐次通訳に変え、40分遅れで開始しました。最初に、エジプトの水資源・灌漑大臣である世界水評議会会長のアブ・ザイド氏から開会の挨拶があり、その後、橋本元総理(現在、GLOBEジャパン会長、第3回世界水フォーラム常任委員会会長)から水問題がどうして重要なのかについて、通訳を入れ、1時間20分の大演説を行いました。
 私を含むGLOBEメンバーは、世銀総裁との会談があるため、橋本元総理のスピーチ中に中座しましたが、橋本スピーチの最初の部分で触れた、「地球上に存在する水の97.5%は海水であり、淡水はわずか2.5%。その淡水の70%が南極などの氷であり、残り30%は地下水、地表に存在する淡水はわずか0.01%にすぎない」とのコメントは、会場にいた聴衆百名に対して水の大切さを真剣に考えざるを得ない雰囲気をかもし出し、私も改めて来年3月の日本での世界水フォーラムの成功に全力を尽くすことを強く決意しました。
 世界水フォーラムは、国の4分の一が水面下で、永年、水と戦ってきたオランダが熱心に進めてきた会議体であり、いよいよ日本が本格的に参画する時到来の感を持ちました。
3.世界銀行総裁会談
 発展途上国の開発案件に対して、常時、環境面から注文をつけるGLOBEジャパンと世銀総裁との今回の会談は、世銀最大の資金供出国もあってか、双方とも自然な形で会談を望む形として実現しました。GLOBEジャパンメンバーは国際会議場近くの世界銀行南アフリカ事務所を尋ね、午後3時半から1時間ほどの会談となり、日本側は、広中参院議員、河野太郎衆院議員、小杉元衆院議員と私が出席し、現在、2期目7年間務めるウオルフェンソン総裁と活発な意見交換を行いました。
 最初に私から総裁に対して、今回のヨハネスブルクサミットの成果について尋ねたところ、総裁は2050年には世界人口が現在の60億から90億人になり、貧困問題の解決、きれいな水と衛生面の確保には資金の調達が必要であり、そのためには日本の支援が不可欠であることを強調していました。私は、その対策は国連が行っているのではとの問いかけに対して、総裁は現在の国連は十分に機能しておらず、資金供給力を持つ世銀こそが、世界の貧困問題解決に重要な役割を有すると語っていたのが印象的でした。
 一方、今回のサミットの世界実施文書で合意された、先進国がGDPの0.7%のODA予算を確保することについて、日本側から、「世界市民税―グローバル・シチズン・タックス」のようなものを確立してはどうか、また、京都議定書のように、今後数年以内に、0.7%を確保するための法的拘束力を持つ枠組み作りに努力すべきとの意見が出され、世銀に資金が集まるシステムを考えている金融機関出身の総裁は、大変意を強くした様子でした。しかし、現実には課題も多く、世界の納税者の理解を得るための、貧困撲滅を見据えた教育・啓蒙が不可欠であり、今後の発展途上国の貧困問題解決には、「教育の10年」の世界実施文書の着実な推進こそが重要となることを強く認識しました。
4.SOWETO視察
  SOWETOは、白人政権が20世紀の一連の黒人・有色人の分離統治政策(アパルトヘイト)を確立し、特に1964年に成立した集団地域法により、南アフリカ全土にできた黒人のタウンシップに起因する、サントン地区から車で1時間ほど離れた西南に位置する、国内2番目の人口3.5百万人の黒人居住区です。世銀との会合終了後の夕方で薄暗くなってきたため、車中からのSOWETO視察となりましたが、76年のアパルトヘイト反対運動発祥の地であり、マンデラ元大統領が63年まで住んでいた町ですが、現在では、裕福な区域もある一方、電気水道がなく、政府が設置した架設トイレの居住区は、日本の第2次大戦空襲跡地のバラック小屋がひしめき合う風景を思い出させるものであり、視察時が夕食時のためか、外では炊き出しが行われ、焦げたような臭いが一面に漂っていました。
アフリカでも比較的豊かな南アフリカでも、国内には南北問題があり、貧困問題は身近にあることを実感しました。

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【3】ヨハネスブルク・サミット総括 
1.第2回目サミットの感動のない会議
  10年前のリオでの地球サミットは、世界の指導者が一同に会し、人類が始めて地球全体に関する問題を共有する場となり、多くの感動をもたらしましたが、今回のヨハネスブルク・サミットは、過去10年間の総括も含まれ、利害が複雑に絡む世界の現状から、多くの現実の課題を克服できない現在の政治体制を意識し、パフォーマンスが目立つ、感動が少ないサミットとなりました。
しかし、10年前のリオサミットで合意された地球温暖化条約の制定について、現在、真っ向から京都議定書を否定している米国は、最近中国が批准し、ロシアも1年以内の批准が期待できるなど、米国の一国独自政策が現在は通用しなくなっていることも明らかになり、今回のGLOBE総会等で、米国が国際世論を尊重せざるを得ない時代の変化は歓迎すべきであり、粘り強い対話型交渉で、環境と開発問題を克服できる歴史的実証もここ10年間の経験で見えるところまできました。

2.サミット成果が問題の進行速度を超えられない現実
 一方、人口増加に対する決定的な解決策は見出されず、人類の英知が結集するサミットの成果より、増大する地球環境問題の方が大きいのではないかと考えると、50年後、百年後の人類子孫は大変厳しい環境で生活を強いられることが容易に予想されます。このため、池田SGI会長が提言する「国連環境高等弁務官」の設置は、人類の存亡にとって不可欠であり、そのために、日本政府は一丸となってその実現に最大の努力をすべきであると決意を新たにしました。

3.ノウハウは着実に蓄積
 京都議定書を世界中で批准し、実行に移せば、人類は環境問題を克服できることが実証され、このような環境問題解決のノウハウを着実に蓄積すれば、人類の21世紀に大きな希望が見えてきます。しかし、今回のサミットに参加している時は崇高な問題意識を持ちながら、各国の指導者が帰国すると途端に国内事情に固執し、地球環境問題を後回しにしてしまう悪循環を断ち切らなければなりません。そのためにも、国際会議の頻繁な開催に努め、アフガニスタン復興会議のように、そのための場を日本が提供することが重要となります。

4.次回サミットへの日本の課題
 戦後の日本は、軍事大国から経済大国へと転換し、世界第2位の経済大国となりました。当然、今後の日本が目指す道は、経済大国から環境大国になるべきであり、そのためにも、日本が持つ環境技術の更なる開発と世界への技術移転が図られなければならないと考えます。公明党が連立政権の中で推進してきた循環型社会構築への着実な推進と、そこで蓄えた人材を海外に積極的に送り出すシステムを作り、世界の環境模範国になることが重要です。そのため、私も多くのことを学び、世界の有識者と対話し、全速力で働くことを強く決意します。
以上


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