ワシントンDC出張報告(2002年4月29日~5月4日)

毎年ゴールデンウィーク中に開催される日米国会議員会議に参加するため、 今年もワシントンDCを訪問しました。
この会議の前後に、総務省に関係する行政視察を行いました。

【1】GPRA(政府業績成果法)視察
1.行政管理予算庁(OMB)
2.上院予算委員会スタッフ
3.会計検査院(GAO)
4.退役軍人省(VA)
【2】日米国会議員会議
1.パネル・ディスカッション
2.日米国会議員会議
 ①政治
 ②経済
 ③安全保障

【3】米国証券監視委員会(SEC)

【4】連邦通信委員会(FCC)
【5】全米知事会

 
【1】行事報告
 
1.GPRA(政府業績成果法)視察
 ワシントンDC到着後直ちに、私が推進し、昨年6月に成立した行政評価法の参考となったGPRA(政府業績成果法)を所管するOMBの実質№2のBreul氏及び93年GPRA起草に関わったGPRA特別顧問のGroszyk氏と会談し、1時間半に渡り、現在のGPRAの施行状況について聴取した。
 当初、GPRAはウイリアム・ロス上院議員の立法と理解していましたが、初老のGroszyk氏の説明は全く異なりました。ロス上院議員はGPRAの考え方を法案にまとめましたが、内容に問題が多すぎ、Groszyk氏がロス議員と直接交渉し、彼が法案起草を行ったことが明らかになりました。大統領府(日本の内閣府に相当)にある約350人のスタッフを抱えるOMBは行政側であり、議員立法しかできない米国の立法制度では極めて珍しい、行政主導で行われた経緯を知るにつけ、現在も行政評価の導入がいかに難しい制度で、しかも、予算執行に関する行政と議会の関与と関係のあり方を大きく変える制度であることを強く認識しました。
 米国は1939年にOMBの前身となるBOB(予算局)が設置されて以来、日本での予算獲得至上主義の制度が米国でも最近まで改革されなかったため、予算の執行に成果主義を導入するために制定された93年GPRA以降、97年まで試行錯誤が続きました。その結果、業績予算システムの効果的な実施のためには、洗練された会計システムの整備が課題となり、現在でも、予算執行の業績成果を図るための会計制度構築に挑戦中であり、一方、連邦政府全体の連結ベースの会計報告制度は進んでいるものの、予算と連動していない実態を知り、予算と業績評価と会計報告の三つの制度をリンクさせることの難しさを再認識しました。
2.上院予算委員会スタッフ
 上記のOMB幹部から紹介を受け、上院予算委員長の秘書長(100名以上のスタッフを有する)を訪問し、GPRAに対する米国議会の対応について質問しました。秘書長からは、GPRAによる業績評価が立法作業に与える影響は少ないものの、大統領府としては関心が高いことが確認できました。また、2003年度の大統領予算書(現在国会で審議中)に始めてGPRAに基づいた業績評価報告の記載が入りましたが、予算策定にGPRAの成果を反映するには、まだ時間を要すると考えていました。
3.会計検査院(GAO)
 3度目の会見となるウォルカー院長は、任期15年のうち、12年を残しており、戦略的に会計検査院の業務改善を進めています。行政に所属する日本の会計検査院とは異なり、米国GAOは国会に帰属(英国も同様)し、国会議員から多くの調査依頼がGAOに寄せられ、GAOは数多くの調査報告書を国会に提出しています。
 今回の訪問目的は、①GPRA制度をGAOがどう評価・活用し、今後、OMB等とどのように連携していくのか、②エンロン問題に対してどのように取り組み、どのように決着していくのか、の2点を尋ねるためでした。
 1点目のGPRA制度については、人的資本の活用、目的と成果志向の予算制度への変更、国会でのGPRA制度活用のための連邦議員への啓蒙を強調していました。特に、GPRA制度は複雑であり、かつ、この制度を支援してくれた何人かの上院議員が勇退したため、新しい理解者作りに、現在、積極的に連邦議員にアプローチしているとのことでした。私は、総務省としてもこの作業の必要性を感じ、日本帰国後、行政評価局を中心に、決算行政監視委員会の国会議員を中心にアプローチするように考えています。
 2点目のエンロン問題は、日本の報道が必ずしも正確に伝えていない面もありますが、エンロンとの癒着関係で疑惑をもたれているチェイニー副大統領の周辺捜査目的ではなく、大統領府が行ったエネルギー・タスク・フォースに誰が出席したのかどうかについての資料を提出するよう副大統領に求めたが、副大統領の法律顧問がGAOにはそのような調査権がないと主張し、法廷にその判断を持ち込んだためであるというのが事の真相でした。しかし、議会からは現在でもエンロン関係で56件の調査依頼があり、その対応に苦心しているようでした。
 実際、エンロンから寄付を受けた政治家は共和党・民主党共に多くいるため、後述の日米国会議員会議の中でこの話題に触れたとき、米国議員はあまり触れたくない様子で、日本のリクルート事件を思い出す雰囲気でした。しかし、総体的には、エンロンの政治家への資金提供そのものを批判する声は少なく、日本とは異なる冷静かつ大人の対応を取ろうとしている米国政治の成熟度も実感しました。
4.退役軍人省(VA)
  世界最強の軍隊を持つ米国は、2千2百万人の退役軍人および4千万人の扶養家族への医療・福祉サービスを提供するため、国防省に次ぐ、22万人の職員を要する2番目に大きな退役軍人省(日本は総務省が140万人の恩給受給者にサービスを提供)がその業務を行っています。今回、この省へ訪問した理由は、ジョージ・メイソン大学の評価によると、GPRA制度の運用状況に関して、VAの2000年度業績報告書の総合順位は第1位であったため、多くの先進的事例を期待して選びました。
 5月2日の訪問日には、VA副長官他7名のGPRA関係者が、VAのGPRA制度を、この日のために作成した資料に基づき詳細に説明してくれました。
 VAのGPRA関係報告書は、(1)年間業績評価計画書、(2)月次業績評価書、(3)年間業績評価報告書、(4)年間会計報告書の4つが、50人の関係部局の協力を得ながら、7人のスタッフで作成していました。
 際立って感嘆した制度は、月次業績評価制度が定着し、毎月、VAに対する苦情処理済数、未処理比率等の具体的目標に対して実績比較を行っていることでした。この制度運用が可能になった前提には、多くの業務および会計情報制度が、民間企業と同様に数値化されており、そのために、会計事務所に毎年約5億円支払い、業務・会計情報制度の構築および外部監査制度を充実させてきたことにより可能になったことが理解できました。
 日本帰国後、早速、VAの行政評価制度を更に研究し、今後の日本の行政評価制度の改善向上策に反映する決意です。
 
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【2】日米国会議員会 
1.パネル・ディスカッション
 今回で27回目となる日米国会議員会議(毎年2回開催-5月はワシントンDC。11月は東京。私は13回目から参加)は通訳なしの会議であり、今回始めての試みとして、この会議の事務局を務めるジョージ・ワシントン大学構内で、4月30日、日米関係に関心のある学者、シンクタンク、プレス、学生約百人の聴衆を前にして、大学側が予定した質問に両国会議員(日本側は7名、米国側は5名)が答え、更に聴衆からの質問にも答える形で、2時間のパネル・ディスカッションが行われました。
 主な質問内容は、日本側に対しては小泉政権の今後の行方、日本経済の回復の見込み、不良債権処理等が、米国側に対しては円:ドルの交換レート、中国のWTO加盟問題、イラク対応等が尋ねられました。
 聴衆側からは、日本の政治経済の構造改革が実際に進んでいるかとの観点から、多くの質問がでました。この日の日本側の国会議員7名(全員与党。うち5名が旧新進党所属)が細川政権以降の政界再編の当事者であり、過去10年間の政界再編にも係わらず、現実にはさほど大きな改革が行われていないことが浮かび上がった議論となりました。私はその原因について、米国のフロンティア精神と競争文化、日本の和の精神とコンセンサス文化の違いが、過去10年間に変化を求めてきた米国と変化を抑えてきた日本の違いを強調しながらも、現在、日本の中に、じわりと変化を受け入れる土壌が共有化しつつあり、近い将来、大きくそれらの力が一つになり表面化したときに、日本再生が現実のものになると主張しました。
2.日米国会議員会議
 恒例の晩餐会が会議の前日に行われました。場所はユニオン駅構内にあるレストランであり、2年前に改修された結果、現在は非常に美しい建物になっており、7年前に見た灰色の駅とは様変わりの変化に驚きを感じました。

 ①政治
 翌日の5月1日は、下院法務委員会室で行われ、朝8時からの朝食会から実質的な議論が始まりました。その日の午前は、今年の11月に行われる中間選挙の予想と米国の政治情勢についての説明が米国側からあり、共和党が主張する軍事費の増大か民主党が主張する医療福祉の増大かが焦点になりそうです。
日本の政治情勢については、前日の大学で行われた議論の延長となり、自民党と小泉内閣の関係、政治と官僚・金・秘書の問題について議論が集中しました。私は、日本の政治を改善するには、英国制度を見習って、官僚が議員にならないこと(政と官の分離)、内閣と与党の権力の二極分化を廃止し、内閣に集中すること、この2点を改善しないと日本の政治は変わらないと主張しました。

 ②経済
 この日の午後は、日米の経済と中国を中心とする貿易問題について議論しました。日本の国会議員が資料を使い、日本の経済の現状を詳細に説明し、その後、インフレ・ターゲット派、減税実施の内需拡大派、構造改革派と意見がまとまりませんでした。
 中国問題については、米国議会で審議中の農業支援(その日の翌日に採決あり)を強く打ち出した「農業法案」があったため、日米共に、保護主義的な議論に集中しました。
 環境問題について、私は米国の京都議定書脱退について、強くブッシュ政権の対応を批判したため、共和党議員がこれに強く反発し、京都議定書は非現実的であり、ガソリンの60%値上げに国民は納得しないなどと、反論してきました。私も負けじいと反論しましたが、不幸にも、この時は共和党議員しかおらず、環境志向が強い民主党議員が不在のため、私への声援は日本の議員一人となりましたが、この会議に傍聴していた同大学の学生数人の多くは、米国議員の発言に失望し、私の意見に好意的であることを伝えてくれました。

 ③安全保障
 会議2日目の午前は、常駐メンバーであるハスタート下院議長が朝食会に参加してくれました。彼は若いころ、日本で英語を教えてきたことがある親日派議員であり、この会議の成功を期待するスピーチがありました。
安全保障の議論は、米国のイラク攻撃の可能性とタイミング、その際の日本の取るべき行動と制約、憲法改正論議、更には、北朝鮮に対する日本の対応等に関心が集中しました。
 私は、身近な例を引きながら、同じ人間でも「悪魔の枢軸」にも「天使」にもなりうるものであり、最後まで対話による解決を続け、悪魔の枢軸にならないように、最大の努力を払うべきであると主張しました。

 この会議のなかで、米国の常任メンバーである議員が、本年11月の中間選挙で区割りが変更され、新選挙区は従来の選挙区が3割しかなく、残りの7割は全く新しくなることを憂いており、日本も現在、国会で審議中の区割変更の法案を考えると、民主主義国家の選挙では必ず起きる悩みであることが確認されました。

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【3】米国証券監視委員会(SEC) 
 米国の経済・政界を揺るがしたエンロン事件に関する監督機構であるSEC(本社1千2百人、全国3千人、うち会計士が数百人)を訪ね、この問題に対する対処状況について質問しました。私と同じ会計士の担当者は、エンロン問題は人とシステムによる間違いであり、今まで不明瞭だったSECの責任範囲を明確にするための条文改正案が現在国会で審議中であり、経営者に対する責任の増大、現在の裁判所経由で会計士を処分する手続などを変更することが予定されています。
 国際的な企業会計制度の設定主体機構、会計士連盟、証券監視機構が、この問題の解決方法の推移について、大きな関心をもって見ており、国内外の大きなプレッシャーの中で、現在も問題解決の対応に追われていました。


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【4】連邦通信委員会(FCC) 
 通称FCCと呼ばれるこの組織は、米国の通信事業に強い影響と監督権限を持ち、本年1月からパウエル国務長官の息子であるパウエル委員長が、FCC2千人の組織の責任者となっています。
 FCCは総務省の総合通信基盤局および情報通信政策局とほぼ同じ機能を有しており、私は先月成立した迷惑メール規制法について説明をしながらFCCの迷惑メール規制について質問しました。米国の通信規制および取り締まりは州が所管しており、迷惑メールの受信拒否をしても引き続きメールがきた場合に処罰の対象としているのとは反対に、日本はあて先不明の大量のメール送信を規制していることに対して、パウエル委員長は、日本の規制方法が憲法で保障している表現・報道の自由に違反しないかと尋ねられました。
 この問に対して、私は立法作業にその点を配慮した経緯を述べ、特に問題が無いこと、および、日本の規制方法が効果的な場合、米国にそのノウハウを提供する事(逆もあり)などが交わされました。
 現在、総務省が力を入れているIPv6(現在のインターネット認証基盤の次世代版)には委員長もライバル意識を持っているようで、この分野での日米間の競争は今後も激しくなることが感じられた会談となりました。

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【5】全米知事会 
 全米知事会は、日本の全国知事会に相当し、ここで19年間務める事務局長にこの会の業務の内容について尋ねました。日本の都道府県とは異なり、米国の州政府はそれぞれ独自の憲法を持ち、課税権、州の軍隊もあり、連邦政府と同等の権限を有しており、このため、全米知事会の陳情による連邦政府および議会への圧力は、圧力団体トップ25の一つとなっています。
 知事会の目的は、①州政府の要望を連邦政府につなげる事、②教育、福祉等の政策要望を行うこと、③新しい知事に教育を行うことが挙げられ、この事務を行うため、百人のスタッフを要しています。この事務所に、30の州政府代表がおり、医療福祉・道路などの補助金として年間250億ドル、それ以外にも600の個別補助金で80億ドル、連邦から州政府に支給されています。最近、州側の要求で、連邦法改正を行い、医療補助金を14%増加しましたが、その内、50%を州政府が、45%を連邦政府が負担することになりました。
 本年2月、知事会会長等とブッシュ大統領の2時間に渡る会談が持たれましたが、大統領は州内政には大きな関心は無い様子でした。90年代は連邦政府から州政府への要求は少なかったようでしたが、最近は強くなる傾向のようです。
以上

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